ウルリヒ・プレンツドルフ

旧東ドイツの、「ライ麦」にも譬えられる素敵な作品。のっけから死んでいる主人公のなんともいえない語り口。青春小説らしい一節は、「人間なんて17か18くらいまでがいいところ。25も過ぎたくるみ割り野郎をみると蹴りつけてやりたくなる」(だったかな。図書館で借りたのでうろ覚え)この「くるみ割り野郎」という表現は、東ドイツではどういう人間をさすのか、気になるところだった。英語では「nuts cracker」で「ほら吹き」の意が。家族に話したら、「ほら吹き野郎」と訳してこそちゃんとした翻訳なのであって、原文どおりなのは手落ちだという。私は「くるみ割り野郎」のままでいいと思う。想像の余地があると思う。それから「ユグノー」としての自己に自己同一性を求める?様が痛々しくていい。

若きWのあらたな悩み (白水Uブックス (55))

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