堀内誠一『父の時代 私の時代』

前に展覧会に行ってきた堀内誠一氏の自伝。自伝というかエディトリアルの仕事にまつわるエッセイのようなもの。すごーく昔のことが書いてあるんだけど、当時脚光を浴びていたそうそうたるメンバーとの交友録でもあって、名取洋之助とか今のミノルタの前身の出してたロッコールとか織物出版とかアンアンとか、いろんな人の描写があってそれだけで満腹、戦前戦後のデザインの選りすぐりの情報を、生のままに吸収できる本。出だしはナチス・ドイツのデザインに関するものでびっくりだが、視線がプロ的。こういう流れのなかに、いや果てに、その流れを土台として現在のエディトリアルもあるんだなと思う。

父の時代・私の時代 わがエディトリアルデザイン史

父の時代・私の時代 わがエディトリアルデザイン史

そしてこの人は卑近なところがない。読んでいて気持ちいい。時代のせいか。デザイナー(絵本作家でもある)なので文章は名文というわけにはいかないけれど、人格者だなと感じるのはいろんな人づきあいの客観的な考察を読んだとき。なんか暖かいのです。