至福のわけ

友人の中村さん(仮名)の文学界の新人小説月評読み終わった。面白かった。文芸誌は滅多に手に取らないけどこれから読むようになるかも知れない。
高校時代恩師が新聞の「ひと」に載ったときはあまりの実像との距離にメディアへの不信のようなものが芽生えたけれど、今回は本当に自分の知っている友人がそこで書いているという風に思えた。(本人が書いているのだから当たり前)会わなかった間にたった歳月と、重ねた知識量とかはずいぶん違っていたし、感覚的な人だと思っていたのがとても論理的だったり。読んでいて至福だったのは書評によくみるように小説という対象のあらすじを書くとか、そういう具体をはなれて、いきなり本質と洞察に持っていく抽象度の高さ。よくここまでおのおのの作品からたくさんのことを見抜けるなあ。友人は自分の文章のことを「血肉が足りない」(!)と言っていたけれど・・・。
私の中の中村さん語録に「私は言葉に仕える人だと思っている」というのがあって、彼女の文章にあるのは、言葉をあやつって自己表現しようとかしない故の魅力かもしれない。なんにしても語彙が豊かなのにストイックで、自分をすごく抑えている気がするけれど、でもちゃんとそこに中村ワールドが広がっている・・・。不思議だ。あと品格のようなものをすごく感じた。これも至福。