精神のいかさま取引

人間の顔には、狡猾な遁辞の、逃げ口上のかぎりない錯雑が読みとれる。それは精神のいかさま取引に呼応するものであって、すべてがこのいかさまに基礎をおいているのだ。人々はもう、生を太陽の単純性に還元してしまおうとはしない。にもかかわらず、私たちはひとりひとりが、自分の中にこの単純性を抱えこんでいる。自我のしみったれた不安に発する、かずかずの偶然事の錯綜に足をすくわれて、わたしたちはこの単純性を忘れてしまうのである。

有罪者―無神学大全

有罪者―無神学大全

友人が、「嘘をついたらこのへん(と心臓のあたりをさして)がざわざわしてくる」からつかないと言うのを聞いたのと、この本のこのページにさしかかったのが同時期で、関連付けて入ってきた。感覚の世界には嘘と本当との間に明確な壁が築かれている。自我とか思考の世界では、平気で嘘が出てくるんだよ多分。(あやしい)