読んだけど既視感のある作品。ヴィアン節ではないので、最初がっかりする。フランスの、とある時代のベストセラーなんだけど、どこがいいんだか。あるとすればサルトルの周りにいた人が、アメリカの黒人の怒りについてこのような非常にティピカルなものを読み取っていたということくらい。ヴィアンが実は自分で書いたのを、アメリカのサリヴァンの作品の翻訳と偽って出版したらしい。

まえがきより

残念なことに、天国のように思われているアメリカは、ピューリタンや、アルコール中毒者や、小うるさい道徳家連中の国でもあるのだ。そしてまた、フランスでは、作家連はもっとオリジナリティーを発揮しようとしているのだが、向こうではすでにそのよさがわかった手法を恥も外聞もなく、徹底的に使おうとするのだ。
 そうだ、自分の商品がうまく売れるのならばなにも手段を選ぶ必要はないではないか。
                                ボリス・ヴィアン