西村賢太「小銭をかぞえる」

ひどい主人公だな、と思ったら私小説だった。ほんとうにこの人は伴侶や伴侶の親に金銭的に頼りながら悪びれもしないひどい人なのかもしれないが、中村さん評によると伴侶もこの主人公もともに「ねたましいほどに幸福そう」な「幻の世界の住人」。悪態をお互いにつきまくるのだが、どこかおかしみがあるようにも。悪態だらけの「ユートピア」なのだとしたら救いがあるかも知れないと思う。